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安全性・リスク精力への影響


Dr. 大木沙織

こんにちは、皮膚科医の大木沙織です。

「AGAの薬を飲むと性欲が落ちる」という話が気になって、治療に踏み出せない方は少なくありません。診察室でも、パートナーには相談しにくくて一人で抱えていた、という声をよく聞きます。

臨床試験で性機能の訴えが出る割合は数%にとどまり、その多くは服用を続けるうちか、中止したあとに落ち着いていきます。副作用を強く意識するほど症状を感じやすくなることも分かってきました。

数字と体の仕組みを知ったうえで、自分に合う進め方を一緒に考えていきましょう。

AGA治療薬による性欲の低下やEDは、臨床試験ではおおむね数%の頻度で報告される副作用です。多くは一時的で、続けるうちに戻る方も、中止して回復する方もいます。

影響の出方は薬ごとに違い、DHTを抑える内服薬と、血管を広げるミノキシジル、頭皮に塗る外用薬では前提が変わります。発生率の実際、症状が出たときの相談先、妊活中の扱いまでを順に整理しました。

頭皮に塗るタイプの育毛剤は血液に移る量がわずかで、精力が落ちたとする報告も限られています。

執筆・監修医師

大木皮ふ科クリニック 副院長 大木 沙織

名前:大木 沙織
大木皮ふ科クリニック 副院長
皮膚科医/内科専門医/公認心理師
略歴:順天堂大学医学部を卒業後に済生会川口総合病院、三井記念病院で研修。国際医療福祉大学病院を経て当院副院長へ就任。

所属:日本内科学会

AGA治療薬で性欲が落ちる人はごく一部

性欲の低下を訴える人の割合は臨床試験ではおおむね数%で、偽薬を飲んだ群にも似た訴えが出ています。

試験で報告された性機能の訴えは数%の範囲

フィナステリドとデュタステリドの試験をまとめた解析では、性欲の低下や勃起の不調を訴えた人は数%の範囲に収まりました。偽薬を飲んだ群にも一定数の訴えがあり、薬だけが原因と決めつけられません。

薄毛そのものが性の悩みと隣り合わせ

46歳の男性を対象にした住民調査では、薄毛が進んだ人ほど自己評価が低く、性に関する悩みを抱えやすいと報告されました。髪の悩みと性の悩みは、薬を飲む前から隣り合わせだといえます。

フィナステリドが性欲に関わるのはDHTが減るから

フィナステリドは薄毛の引き金になるDHTを減らす薬で、DHTは男性機能にも関わるため性欲の変化が話題になります。

DHTは髪と男性機能の両方に関わるホルモン

DHTは、テストステロンが5αリダクターゼという酵素で変換されて生まれるホルモンです。前頭部や頭頂部の毛包を縮ませる一方、男性機能の一部にも関わっています。

ただし性欲を支えているのはDHTだけではありません。テストステロンやエストラジオールも関わるので、DHTが減っただけで男性機能がそのまま影響を受けるとは限らないのです。

不安が症状を呼ぶノセボ効果

副作用の説明を受けた群では43.6%が性機能の不調を訴え、説明を受けなかった群は15.3%にとどまった試験があります。思い込みが症状として現れるこの現象を、ノセボ効果と呼びます。

薬ごとに違う性欲・EDへの影響

同じAGA治療でも、ホルモンに働く薬と血管に働く薬では前提が違うので、まず自分が使う薬がどちらかを確かめてください。

薬剤働く場所性機能の訴え
フィナステリドDHTの生成を抑える数%・偽薬と大きな差はない
デュタステリドDHTをより強く抑えるフィナステリドよりやや多い報告
ミノキシジル血管を広げるホルモンに働かず報告は少ない

内服薬は種類によって抑え方の強さが違う

デュタステリドは2種類の酵素に働くため、フィナステリドよりDHTを強く抑えます。そのぶん性機能に関する訴えが報告される割合もやや高くなります。

フィナステリドとデュタステリドでは、性欲低下やEDの発生率も、出たときの対処法も差があります。副作用が起きる確率は薬ごとの数字で確かめるほうが確かでしょう。ミノキシジルは血管に働く薬なので、精力が落ちる根拠は乏しいと考えられています。

外用の育毛剤で精力が落ちる心配は小さい

頭皮に塗る育毛剤は血液に移る量がごくわずかで、精力への影響を心配する必要は内服薬ほど大きくありません。

塗る薬と飲む薬では体に入る量が違う

外用のミノキシジルが血液に移る割合は1〜2%程度と報告されています。外用のフィナステリドも、血中DHTの下がり方が内服より小さいことが分かっています。

外用育毛剤で精力や性欲がどう変わるかは、体に入る量から見当がつきます。内服薬の副作用が気がかりな方には、外用薬のみで組み立てるAGA向けの薄毛対策という道も残されています。

性欲低下やEDが出たときの対処と相談先

変化に気づいたら自己判断で薬をやめる前に処方した医師へ伝えると、減薬や薬の変更で収まる例が少なくありません。

急にやめると薄毛のほうが戻ってしまう

服用を中止するとDHTは2週間ほどで元に戻り、髪も数か月から1年かけて服用前の状態へ近づくので、やめるかどうかは医師と決めたほうが安全です。

相談先は薄毛の専門外来だけではない

性機能の悩みは、泌尿器科やメンズヘルス外来でも扱っています。生活の乱れや加齢、ストレスが重なっていることもあり、薬以外の要因を含めて診てもらうと道筋が見えてきます。

AGA治療で性欲低下が出たときの対処法と相談先は症状の重さで変わり、フィナステリドによるEDの副作用や、AGA薬の服用中止に伴うリスクも判断の材料になります。

服用をやめた後も続くフィナステリドの症状

中止して3か月以上たっても性機能の不調が残る状態はポストフィナステリド症候群と呼ばれますが、報告はまれです。

診断の基準はまだ定まっていない

国内で処方される1mg製剤での報告は限られる一方、個人輸入の高用量では危険が増すとも指摘されています。

ポストフィナステリド症候群(PFS)で報告される症状は、性欲の低下や勃起の不調から気分の落ち込みまで広い範囲に及びます。原因を確かめる検査はなく、ほかの病気を除いたうえで経過から判断するのが現状です。

妊活中のフィナステリドの扱い

1mgの服用で精液に移る薬の量はごく微量で、パートナーや胎児への健康被害は報告されていません。

精液所見が低い人は事前の検査を

もともと精子の数が少ない男性では、服用中にさらに下がる例が報告されています。妊活の前に泌尿器科で精液検査を受けておくと、続けるか一時的に離れるかを落ち着いて選べます。

フィナステリドが妊活や妊娠にどう影響するかは、精液検査の結果しだいで判断が変わります。中止した場合、精子の状態は3〜6か月ほどで戻る報告が多く、妊活と薄毛対策のどちらかを諦める話ではありません。

AGA治療は個人輸入ではなく処方で始める

副作用が出たときに頼れるかどうかで個人輸入と医師の処方は大きく分かれるため、安さだけで選ぶと守りが薄くなります。

副作用が出た後の道が変わる

個人輸入では偽造品をつかむ危険があり、体調の変化が出ても自分で判断するしかないうえ、医薬品副作用被害救済制度の対象からも外れます。

  • 正規の処方 … 定期的な診察があり、減薬や薬の変更をその場で相談できる
  • 個人輸入 … 用量の管理も副作用の判断も自己責任で、救済制度が使えない
  • オンライン診療 … 通院の負担を抑えながら、処方と経過の確認を受けられる

費用の差は送料や関税を含めると縮まるので、AGA治療薬の個人輸入と処方の違いは安全性と費用の両面から比べると納得して選べます。

よくある質問

フィナステリドで性欲が落ちたと感じたら、すぐに服用をやめるべきですか?

自己判断での中止はおすすめしません。中止するとDHTは2週間ほどで戻り、髪も数か月かけて元の状態へ近づきます。処方した医師に変化を伝えれば、減薬や薬の変更といった選択肢を一緒に検討できます。

AGA治療薬による性欲の低下は、やめれば戻りますか?

多くの場合、中止から数週間で落ち着いたという報告があります。服用を続けたまま症状が薄れていく方もいます。まれに中止後も不調が長引く例が知られており、その場合は早めに医師へ相談してください。

育毛剤を頭皮に塗るだけでも精力に影響しますか?

外用の育毛剤が血液に移る量はごくわずかで、精力への影響を示す根拠は乏しいと考えられています。内服薬と混同されたまま不安だけが広がった面もあり、心配な症状があれば使用を続けたまま医師にご相談ください。

ミノキシジルでEDが起きることはありますか?

ミノキシジルは血管を広げる薬で、男性ホルモンには働きません。性機能に関する報告もフィナステリドより少なくなっています。動悸やむくみなど別の症状が出ることはあるため、体調の変化は医師に伝えてください。

フィナステリドを飲んでいると、パートナーの妊娠に影響しますか?

1mgの製剤では精液に移る量が微量で、これまで健康被害の報告はありません。ただし精子の数がもともと少ない方は、妊活の前に精液検査を受けておくと安心です。中止後は3〜6か月で戻る報告が多くみられます。

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