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基礎知識・原因遺伝と対策
Dr. 大木沙織

こんにちは、皮膚科医の大木沙織です。

「父も祖父もハゲているから、自分もいずれそうなる運命なんでしょうか」診察室で、そんな不安を口にされる方は本当に多くいらっしゃいます。

確かに男性型脱毛症(AGA)には約80%という高い遺伝的素因が関わっており、この数字だけを見ると諦めたくなる気持ちもよく分かります。

しかし医師としてお伝えしたいのは、遺伝が決めるのは「ハゲる運命」ではなく「ハゲやすい体質」にすぎないということです。

リスク遺伝子を持っていても、スイッチが入らなければ症状は現れませんし、たとえ発症しても早期の対策で進行を大きく食い止められます。

男性型脱毛症(AGA)の発症にはおよそ80%の遺伝的素因が関わるとされています。

しかし遺伝が決めるのは「ハゲる運命」ではなく「ハゲやすい体質」です。遺伝の仕組みを正しく知れば、対策の方向性が見えてきます。

本記事では薄毛と遺伝の関係から、今日から打てる具体的な手立てまでを皮膚科医の視点で整理しました。

執筆・監修医師

大木皮ふ科クリニック 副院長 大木 沙織

名前:大木 沙織
大木皮ふ科クリニック 副院長
皮膚科医/内科専門医/公認心理師
略歴:順天堂大学医学部を卒業後に済生会川口総合病院、三井記念病院で研修。国際医療福祉大学病院を経て当院副院長へ就任。

所属:日本内科学会

薄毛やハゲが遺伝する確率は約80%と考えられている

男性型脱毛症(AGA)は約80%が遺伝によって決まる多因子遺伝の疾患であり、親族に薄毛の男性が多いほど発症リスクは高くなります。遺伝的素因は複数の遺伝子が重なって作用するため、1つの遺伝子だけで結果が決まるわけではありません。

双子を対象にした研究では、一卵性双生児の薄毛の一致率が二卵性に比べて有意に高く、強い遺伝性が繰り返し確認されています。家族歴は、将来の髪の状態を占う最も信頼できる指標のひとつといえるでしょう。

薄毛に関わる代表的な遺伝子と染色体の場所

遺伝的に「ハゲやすい体質」を構成する要素は、大きく3つに分けて整理できます。X染色体上のアンドロゲン受容体(AR)遺伝子、常染色体上の5αリダクターゼ関連遺伝子、そして20番染色体上の20p11領域です。

近年の大規模ゲノムワイド関連解析(GWAS)では、AGAに関わる遺伝子座が数百に及ぶことも報告されています。薄毛は単一の遺伝病ではなく、無数の小さなリスクが積み重なって発現する体質と考えてください。

薄毛に関わる主な遺伝要素の整理

遺伝要素染色体の位置担う役割
アンドロゲン受容体(AR)遺伝子X染色体(Xq11-12)DHTへの感受性を決定する
5αリダクターゼ関連遺伝子常染色体(2番・5番)テストステロンをDHTに変換する
20p11領域20番染色体非ホルモン経路でリスクを高める

遺伝だからといって必ずハゲるとは限らない

リスク遺伝子を持っていても、スイッチが入らなければ症状は出ません。髪の寿命はヘアサイクルの回り方で決まり、そのサイクルに影響を与えるのが生活習慣と医学的な介入です。

「遺伝だから諦める」と決めつけるのは早計といえます。遺伝は発症の「傾向」を決めるだけで、進行スピードや発症年齢は後天的な要素で大きく変わります。正しい知識と早めの行動が、将来の髪を守る鍵になります。

母方の祖父がハゲなら自分も薄毛になる確率が高くなる

薄毛の遺伝経路で最も重要な人物は「母方の祖父」です。AR遺伝子はX染色体上に存在し、男性のX染色体は必ず母親から受け継ぐため、母方の家系、特に母方の祖父の頭髪状況は自身の将来を占う有力な手がかりとなります。

「おじいちゃんがハゲだと孫もハゲる」という通説は、単なる迷信ではなく遺伝学的に裏付けられた事実です。ただし、母方の影響だけで全てが決まるわけではない点も押さえておきましょう。

X染色体が運ぶAR遺伝子と母系遺伝のルート

男性は性染色体XYを持ち、X染色体は母親から1本だけ受け継ぎます。この1本のX染色体の中にAR遺伝子が乗っているため、父親の頭髪はこの部分に直接の影響を及ぼしません。

母親は祖母由来のXと祖父由来のXを1本ずつ持っており、どちらを息子に渡すかは半々の確率です。母方の祖父がAGAだった場合、リスクの高いX染色体を受け継ぐ確率は約50%と考えられます。

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両親がフサフサでも安心できない隔世遺伝の落とし穴

「両親は髪が豊かなのに自分だけ薄毛になった」というケースは、世代を飛ばして薄毛遺伝子が発現する「隔世遺伝」で説明がつきます。母親は女性ホルモンの保護で症状が出にくく、保因者として遺伝子を次世代へ渡すためです。

家系図をさかのぼって祖父母や曾祖父の頭髪を確認すると、自分の遺伝的背景がより立体的に見えてきます。見た目の印象だけで判断せず、親族全体の傾向を俯瞰することが大切です。

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AR遺伝子と5αリダクターゼが握る薄毛発症の引き金

AGA発症の直接的な引き金は、男性ホルモンDHT(ジヒドロテストステロン)です。テストステロンを5αリダクターゼがDHTに変換し、そのDHTがアンドロゲン受容体に結合すると、毛包を縮小させる指令が出ます。このDHT量と受容体の感度を決めているのが遺伝子です。

DHTを大量に作る体質と、少量のDHTでも強く反応する体質の両方が揃うと、若くから進行性の薄毛が現れやすくなります。2つの遺伝的要素を切り分けて理解すると、対策の方向性も見えてきます。

アンドロゲン受容体の感度はCAGリピート数で決まる

AR遺伝子にはCAGという塩基配列が繰り返される領域があり、この回数が少ないほど受容体の感度が高くなります。感度が高い体質は、わずかなDHTでも強い脱毛シグナルを出してしまうため、AGA発症リスクが上がります。

HillmerらがAm J Hum Genetに発表した研究では、AR遺伝子の変異が若年性AGAの発症原因の約46%を説明するとされています。受容体の感度は、薄毛の運命を左右する最大の単一リスク因子といえるでしょう。

CAGリピート数と薄毛発症リスクの関係

CAGリピート数受容体の感度発症リスクの傾向
短い(20回未満)高い20代から早期発症しやすい
標準的(21-25回)中程度生活習慣で進行速度が変わる
長い(26回以上)低い高齢まで豊かな髪を維持しやすい

5αリダクターゼの活性度がDHT量を左右する

5αリダクターゼにはI型とII型があり、AGAへの関与が大きいのはII型です。II型は前頭部と頭頂部の毛乳頭に多く分布しており、活性が高いほどDHTを大量に生み出します。

この酵素の働きを抑える薬が、皮膚科でおなじみのフィナステリドやデュタステリドです。薬が効きやすいかどうかも、遺伝的背景とある程度結びついていると考えられています。

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父親の家系から受け継ぐ常染色体上のリスク遺伝子

父親から息子への遺伝はY染色体と常染色体を通じて起こり、特に5αリダクターゼ活性を高める遺伝子は常染色体上に存在するため、父方の家系も無視できません。母方の祖父だけを見て判断するのは、リスク評価として不十分です。

父親が薄毛なら、息子の発症リスクは5〜6倍に上がるとの疫学データも報告されています。両親それぞれの家系を総合して見ることが、正確なリスク把握につながります。

Y染色体と20番染色体が担う父系遺伝の影響力

Y染色体は父から息子へ一直線に受け継がれる染色体であり、組み換えが起こりにくい性質があります。祖先の形質を比較的そのまま保存しながら男系男子に伝わるため、父方の家系全体に共通する薄毛傾向を反映しやすいのが特徴です。

20番染色体上の20p11領域は、ホルモン作用とは別ルートでAGAリスクを高めることが大規模研究で確認されています。この領域の遺伝子は性別に関係なく両親から受け継がれるため、父親から息子へも娘から母親へも伝わります。

性染色体と常染色体による父系・母系遺伝の特徴

染色体の種類伝達経路薄毛への関与
X染色体母親→息子AR遺伝子の感受性を左右する
Y染色体父親→息子父方の体質傾向を伝える
常染色体両親→子5αリダクターゼ活性などに関与する

多因子遺伝で決まるハゲやすさの全体像

AGAは単一の遺伝子病ではなく、複数の遺伝子が協力して発現する多因子遺伝疾患です。Pirastuらが2017年に発表したGWASでは、71の独立した遺伝子座がAGAリスクの約38%を説明すると報告されました。

父方の5αリダクターゼ活性と、母方のAR遺伝子感度が揃うと、20代前半から明らかな薄毛が現れる「若ハゲ」の典型パターンとなります。両方のリスクを抱えている場合は、早めの専門医相談が合理的です。

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兄弟でハゲる人とハゲない人が分かれる確率の話

兄弟が同じ両親から生まれても、受け継ぐ遺伝子の組み合わせはランダムに変わるため、薄毛の発現に差が出るのは生物学的に当然の結果です。誰がどのリスク遺伝子を引き当てるかは、生まれる前から決まっている確率のくじ引きに近いといえます。

「兄はフサフサなのに自分だけ薄い」という現象を理不尽に感じる方は多いですが、遺伝子シャッフルの結果と受け止めることで、対策への意識も前向きに変わります。

遺伝子の組み合わせは兄弟でもランダムに異なる

母親が持つ2本のX染色体のうちどちらを受け継ぐかは50%の確率で決まり、常染色体についても両親の遺伝情報がランダムに組み合わされます。兄弟間で遺伝子の構成は想像以上に異なっているのです。

一卵性双生児であれば遺伝子は完全に同じですが、それでも発症時期や進行度に差が出るケースがあります。この差こそが、環境要因の影響の大きさを物語っています。

兄弟で薄毛の運命が分かれる遺伝的な要因

  • 母方から受け継ぐX染色体が2本のうちどちらだったか
  • 父方の5αリダクターゼ関連遺伝子を引き継いだかどうか
  • 20番染色体など常染色体上のリスク因子の受け取り方
  • 抑制遺伝子の有無や後天的な生活習慣の違い

弟がハゲ始めたら兄の自分もリスクを共有している

兄弟の誰か一人に薄毛が出始めたら、自分の家系にも発現しやすい遺伝子が流れていると捉えてください。まだ兆候がなくても、水面下で進行の準備が始まっている可能性があります。

兄弟の状況は、自分にとっての早期警告システムです。目に見える変化が出る前から生活習慣を整え、遺伝子のスイッチを入れない環境づくりを始めることが、将来の髪を守る賢い投資になります。

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AGA遺伝子検査で将来の発症リスクを数値化できる

AR遺伝子のCAGリピート数を測定する遺伝子検査を受ければ、自身の遺伝的リスクを数値として把握できます。口腔粘膜を綿棒で採取するだけで完了し、医療機関を介してもオンラインサービスとしても利用可能です。

ただし、検査結果は「将来の確定診断」ではなく「リスクの目安」にすぎません。結果を悲観したり楽観したりするのではなく、対策の方針を決めるための判断材料として活用する姿勢が大切です。

検査でわかるCAGリピート数の意味と限界

CAGリピート数が短い体質は、少量のDHTでも強く反応して毛包のミニチュア化を促進します。一方で、リピート数が長くても生活習慣の乱れから薄毛が進むケースはあり、検査結果が全てを決めるわけではありません。

AGAは多因子遺伝であるため、AR遺伝子だけを見ても全体像は見えてきません。2017年のGWASで71のリスク座位が同定されたように、薄毛の遺伝的背景はまだ研究途上にあります。

遺伝子検査で把握できる情報と把握しきれない情報

わかることわからないこと
AR遺伝子の感受性の高さ発症する正確な年齢
体質的な発症リスクの目安生活習慣による進行速度
治療薬への反応傾向常染色体上の全リスク遺伝子

検査結果を治療戦略にどう活かすか

高リスクと判定された場合は、薄毛が目立つ前の早期段階から予防的な対策を始める動機付けになります。低リスクでも抜け毛が多い場合は、AGA以外の原因を疑う根拠が得られ、別の診療科への相談につながります。

検査結果を主治医と共有すれば、フィナステリドなどの5αリダクターゼ阻害薬の選択や、治療開始のタイミングを一緒に考えられます。敵の正体を知ることは、無駄な出費や時間のロスを減らす現実的な武器です。

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遺伝のスイッチを入れない生活習慣で進行を食い止める

遺伝的リスクが高くても、生活習慣を整えればAGAの発症や進行を大幅に遅らせることが可能です。睡眠・食事・運動・ストレス管理・禁煙という基本を守るだけで、毛包にかかる負担は目に見えて軽くなります。

イタリアの研究では、新鮮な野菜やハーブを週3回以上摂取する男性は、AGA発症リスクが有意に低いという結果も示されました。日々の小さな選択が、数年後の毛量の差を生みます。

睡眠と食事で頭皮環境を底上げする

成長ホルモンは深い睡眠中に分泌され、毛母細胞の分裂を促します。毎日6〜7時間以上の睡眠を確保し、就寝前のスマートフォン操作を控えることが、髪を育てる土壌づくりの第一歩です。

髪の主成分であるケラチンを合成するには、タンパク質と亜鉛、鉄分、ビタミンB群が必要です。コンビニ食に偏らず、肉・魚・大豆製品・野菜・ナッツ類をバランスよく取り入れてください。

薄毛予防に役立つ栄養素と主な食材

栄養素代表的な食材髪への働き
タンパク質鶏肉・魚・大豆製品・卵ケラチンの原料になる
亜鉛牡蠣・牛肉・ナッツ類毛母細胞の分裂を助ける
鉄分・ビタミンB群レバー・ほうれん草・豚肉頭皮の代謝を活発にする

喫煙とストレスが薄毛を加速させる仕組み

タバコのニコチンは毛細血管を収縮させ、頭皮の血流を著しく低下させます。複数の研究をまとめたメタ解析では、喫煙者のAGA発症リスクは非喫煙者の約1.8倍と報告されました。遺伝的にリスクがある方ほど、禁煙の恩恵は大きくなります。

過度なストレスはコルチゾールの分泌を増やし、毛包周囲に慢性的な炎症を起こします。趣味や運動、十分な休息でストレスを逃がす工夫が、遺伝的弱点を抱える頭皮を守ってくれるでしょう。

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遺伝性の薄毛に効く医学的な治療と育毛剤の使い分け

遺伝性AGAに対して科学的な根拠が確立されている治療は、内服薬のフィナステリド・デュタステリドと、外用薬のミノキシジルです。市販の育毛剤は頭皮環境を整える補助的な役割にとどまり、DHTの産生を抑える力は持っていません。

毛包が完全に萎縮する前に治療を始められるかどうかが、結果を大きく左右します。遺伝的リスクが高い方ほど、早期の医療機関受診が将来の毛量を守る近道です。

フィナステリドとミノキシジルによる標準治療

フィナステリド1mg/日の内服は、血中DHT濃度を約70%低下させます。Kaufmanらが1,553名を対象に実施した臨床試験では、2年間の服用で頭頂部の毛髪本数が平均138本増加しました。

デュタステリドはI型とII型の両方を阻害するため、DHT低下率は約90%に達します。

ミノキシジル外用薬は頭皮の血流を改善し、毛母細胞を活性化させる薬剤です。フィナステリドで進行を食い止め、ミノキシジルで発毛を促す「守りと攻め」の併用療法は、現時点で最も科学的根拠の厚い治療戦略といえます。

AGA治療薬の特徴と使い分け

薬剤名作用DHT抑制・発毛効果
フィナステリド5αリダクターゼII型を阻害DHTを約70%低下
デュタステリドI型・II型の両方を阻害DHTを約90%低下
ミノキシジル外用毛包の血流を改善毛髪密度の増加を促す

市販の育毛剤だけでは遺伝の壁を越えられない

ドラッグストアで手に入る医薬部外品の育毛剤には、DHTの生成を抑える作用はありません。センブリエキスやグリチルリチン酸ジカリウムは頭皮環境を整える目的には有用ですが、AGAの進行そのものは止められないと理解してください。

ミノキシジル外用薬は第1類医薬品として市販されており、発毛効果のエビデンスがある唯一の選択肢です。ただし、進行が進んでいるケースでは単独使用に限界があり、処方薬との併用が効果を底上げします。

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20代の若ハゲこそ早期治療で将来が変わる

AGAは進行性の疾患で、毛包がミニチュア化する前の段階ほど治療への反応が良好です。20代で治療を始めた方と40代で始めた方では、維持できる毛量にはっきりとした差が出ます。

「若いから恥ずかしい」と先延ばしにしていると、毛包が休眠に入り、戻すのが難しくなります。遺伝のリスクを自覚した時点が、受診のベストタイミングです。

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遺伝による薄毛を予防する生活習慣と、AGA治療の医学的アプローチをまとめました
遺伝性の薄毛対策と治療法の全体像を解説

Q&A

薄毛・ハゲの遺伝はどこまで確定的なものですか?

男性型脱毛症(AGA)にはおよそ80%の遺伝的素因が関わるとされています。しかし、これは「必ずハゲる」という意味ではなく、「ハゲやすい体質を受け継ぐ」という意味合いです。

遺伝的にリスクが高くても、生活習慣の改善や早期の医学的治療によって発症を遅らせたり、進行を抑えたりすることは十分に可能です。遺伝子は設計図であって運命そのものではないと捉えてください。

AGA遺伝子検査を受ければ将来の薄毛を完全に予測できますか?

AGA遺伝子検査ではAR遺伝子のCAGリピート数などを調べ、発症リスクの高さを数値化できます。ただし、AGAは71以上のリスク座位が関わる多因子遺伝の疾患であり、1つの検査結果だけで将来を断定することはできません。

検査結果は「リスクの目安」として活用し、生活習慣の改善や専門医との治療方針の相談に役立ててください。高リスクでも対策次第で進行を抑えられますし、低リスクでも油断すれば薄毛は進みます。

母方の祖父がフサフサなら薄毛・ハゲの心配は不要ですか?

母方の祖父の頭髪が豊かであれば、X染色体上のAR遺伝子に関するリスクは比較的低いと推定できます。しかし、父親から受け継ぐ常染色体上の5αリダクターゼ関連遺伝子や20番染色体のリスク因子もあるため、完全に安心するのは早計です。

父方の家系に薄毛が多い場合や、20代で抜け毛の質に変化を感じた場合は、母方の状況にかかわらず皮膚科での相談をお勧めします。両親双方の家系を総合的に見ることが、正確なリスク把握につながります。

遺伝性の薄毛・ハゲに対して生活習慣の改善だけで進行は止められますか?

生活習慣の改善は頭皮環境を整え、毛髪の成長を支える土台として重要な役割を果たします。質の高い睡眠、バランスのとれた食事、禁煙、ストレス管理は、遺伝的リスクを抱える方にとって大きな助けとなるでしょう。

ただし、遺伝性AGAは男性ホルモンDHTの作用による疾患であるため、生活改善だけで進行を完全に止めることは難しいとされています。フィナステリドやミノキシジルなどの医学的治療と組み合わせることで、最大の効果を引き出せます。

薄毛・ハゲ治療のためにフィナステリドを使うと副作用は心配ですか?

フィナステリドの代表的な副作用には性欲減退や勃起機能の変化が報告されていますが、臨床試験での発現率は数%程度にとどまります。多くのケースで服用を中止すれば症状は改善するとされています。

副作用を過度に恐れて受診をためらうより、医師と相談しながらリスクとベネフィットを天秤にかけて判断する姿勢が大切です。気になる症状が出た場合は自己判断で中断せず、主治医に報告してください。

個人輸入には品質や安全性の問題があるため推奨できません。

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